14412.jpg
最愛のペットが死んだーー悲しくて仕事を休んだら「社会人失格」ですか?
2015年04月05日 12時23分

最愛のペットが亡くなったとき、いつも通り仕事に行けますか? そんな問いかけが、ネットの女性向け掲示板に投稿された。

投稿者の女性はその日の午前中、ペットと火葬場で最後のお別れをしたが、喪失感から情緒不安定になっていた。その後、夕方からサービス業の仕事に行く予定だったが、笑顔で接客するなどいつものように仕事をするのは難しい、と書き込んでいた。

社員の人数が足りているため休んでも支障がないようだが、女性は「社会人としては失格ですよね・・・」と不安そうだ。女性の問いかけに対して、コメント欄には「今日くらい、休んでもいいのでは?」「仕事は仕事と割り切るべき」と、さまざまな意見が寄せられた。

家族同然のペットが亡くなった喪失感は計り知れない。しかし、だからといって、会社を休む理由になるのだろうか。ペットロスのために会社を休んだら「社会人失格」なのか。労働問題にくわしい野澤裕昭弁護士に聞いた。

最愛のペットが亡くなったとき、いつも通り仕事に行けますか? そんな問いかけが、ネットの女性向け掲示板に投稿された。

投稿者の女性はその日の午前中、ペットと火葬場で最後のお別れをしたが、喪失感から情緒不安定になっていた。その後、夕方からサービス業の仕事に行く予定だったが、笑顔で接客するなどいつものように仕事をするのは難しい、と書き込んでいた。

社員の人数が足りているため休んでも支障がないようだが、女性は「社会人としては失格ですよね・・・」と不安そうだ。女性の問いかけに対して、コメント欄には「今日くらい、休んでもいいのでは?」「仕事は仕事と割り切るべき」と、さまざまな意見が寄せられた。

家族同然のペットが亡くなった喪失感は計り知れない。しかし、だからといって、会社を休む理由になるのだろうか。ペットロスのために会社を休んだら「社会人失格」なのか。労働問題にくわしい野澤裕昭弁護士に聞いた。

●ペットの死を理由に会社を休めるの?

「労働者は使用者(雇用主)に対し、労働契約に付随する義務として、使用者の指揮命令に従って仕事を誠実に遂行する義務を負います。これを『誠実労働義務』といいます」

野澤弁護士はこのように切り出した。

「『誠実労働義務』のひとつに、労働時間中は職務に専念しなければならないという『職務専念義務』があります。ただし、専念する程度が問題となってきます。

最高裁の判例は『職員は勤務時間および職務上の注意力のすべてを職務の遂行のために用い職務にのみ従事しなければならない』としています。

こうなると、労働者は全精神を傾けて仕事をしなければならないことになります。一方で、そこまで専念する必要はなく、仕事になんらかの具体的な支障を生じさせなければ問題ない、とする見方もあります」

たしかに、一秒たりとも気をそらさず仕事に集中し続けることは、平常時でも、なかなかできることではない。ましてや相談者のように、ペットが死んで情緒不安定ともなれば、なおさら難しいだろう。

「今回のケースのように、ペットが亡くなった精神的ショックから仕事に集中できない場合、最高裁の考えに立てば、仕事に全精神を傾けることができないので、『職務専念義務』に違反することになりかねません。

無理して出社しても、かえって仕事に支障が出そうであれば、むしろ仕事を休むほうが『誠実労働義務』に合致するとも言えます。休んでも、社会人として失格だと思う必要はありません」

最後に野澤弁護士は、このように述べていた。

「ペットロスについては、獣医師の医療ミスでペットを亡くした飼い主が起こした裁判で、『家族の一員ともいうべき存在を失った』として慰謝料が認められており、法的保護の対象とされています。

ペットロスが精神的苦痛をもたらし、その精神的苦痛によって職務に専念できないのであれば、会社を休むことに問題はないでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る